積水ハウスの展示場や実例を見学すると、建物だけでなく「庭」や「緑」が非常に美しく調和していることに気づきます。その秘密は、積水ハウスが2001年から推進している独自の庭づくり提案「5本の樹計画」にあります。
「庭木の手入れが大変そう」「虫が来るのは嫌だ」と敬遠されがちな植栽ですが、実はこの計画には「手入れを楽にする」「資産価値を高める」という合理的なメリットも隠されています。単なるガーデニングではない、積水ハウス流の「里山のような庭づくり」の全貌を解説します。
この記事でわかること
- 「3本は鳥のために、2本は蝶のために」というコンセプトの真意
- 日本の気候に強くメンテナンスが楽な「在来種」の魅力
- 積水ハウスオーナーに人気のシンボルツリー実例
- 虫が苦手な人が知っておくべき対策と樹種選び
「5本の樹計画」とは?里山をお手本にした庭づくり
「5本の樹計画」とは、積水ハウスが提唱する生物多様性保全の取り組みであり、その地域の気候風土に合った「在来種(ざいらいしゅ)」を中心とした植栽計画のことです。
「3本は鳥のために、2本は蝶のために」
この計画には有名なスローガンがあります。「3本は鳥のために、2本は蝶のために、地域の在来樹種を」というものです。これは、「5本しか木を植えない」という意味ではなく、「植える木のうち半分(2本)は蝶の幼虫が食べる木を選び、半分強(3本)は鳥が実をついばんだり巣を作ったりできる木を選ぼう」という比率や考え方を示しています。
例えば、アゲハチョウを呼びたければミカンやサンショウの木を、メジロなどの野鳥を呼びたければ実のなる木を植えます。自宅の庭を、かつての日本の原風景である「里山」のような生態系の一部として機能させることで、人間にとっても心地よい空間を作ろうという試みです。
園芸種ではなく「在来種」を選ぶ理由
一般的なホームセンターで売られている庭木の多くは、海外から輸入されたり品種改良されたりした「園芸種」です。これらは花が派手で見栄えが良い反面、日本の気候に馴染めず、頻繁な水やりや肥料、消毒が必要なケースが少なくありません。
一方、5本の樹計画で選ばれる「在来種(日本の自生種)」は、何千年もかけてその土地の環境に適応してきた樹木です。一度根付いてしまえば、過度な世話をしなくても元気に育ち、病害虫による壊滅的な被害も受けにくいという「強さ」を持っています。つまり、「ズボラな人こそ在来種を選ぶべき」なのです。
5本の樹計画を取り入れるメリット
環境保護という高尚な目的だけでなく、住まい手にとっての実利的なメリットも豊富にあります。
1. 外観の「格」が数段アップする
積水ハウスの外観が美しく見えるのは、建物と植栽が一体としてデザインされているからです。在来種の樹木は、幹の形が自然で美しく、枝葉が柔らかい雰囲気を持っています。これが、人工的な建物(ベルバーンやダインコンクリート)の硬さを和らげ、街並みに調和した高級感を生み出します。適切な植栽は、家の資産価値を維持・向上させる重要な要素です。
2. 自然な目隠しと快適な微気候
アルミフェンスやブロック塀で敷地を囲うと閉鎖的になりがちですが、樹木を配置することで、光や風を通しながら柔らかな目隠し(スクリーン)を作ることができます。また、夏場は葉が茂って日陰を作り、蒸散作用で周囲の空気を冷やしてくれます。冬場は落葉樹が葉を落とし、暖かい日差しを室内に取り込みます。自然の力を利用して冷暖房効率を高めるパッシブデザインの一部でもあります。
3. 鳥が害虫を食べてくれるサイクル
「木を植えると虫が来る」と心配されますが、5本の樹計画では「鳥を呼ぶ」こともセットです。シジュウカラなどの野鳥は、春の子育てシーズンに数千匹ものイモムシや毛虫を捕食します。庭に生態系を作ることで、特定の害虫だけが大量発生するのを防ぎ、薬剤散布に頼らない自然なバランスを保ちやすくなります。
積水ハウスでおすすめの「5本の樹」選定種リスト

実際に積水ハウスの庭でよく採用される、見た目も美しく手入れもしやすい人気の在来種を紹介します。
| 樹種名 | 分類 | 特徴と人気の理由 |
|---|---|---|
| アオダモ | 落葉広葉樹 | 今のシンボルツリーの代名詞。涼しげな樹形と美しい幹肌が特徴で、成長が遅く剪定の手間が少ない。 |
| イロハモミジ | 落葉広葉樹 | 日本の秋を象徴する樹木。新緑も紅葉も美しく、和モダンから洋風までどんな家にも合う。 |
| ヤマボウシ | 落葉広葉樹 | 初夏に白い花を咲かせ、秋には赤い実をつける。病害虫に強く、初心者でも育てやすい。 |
| ソヨゴ | 常緑広葉樹 | 葉が風にそよいで音を立てることが名前の由来。成長が緩やかで、冬でも緑を保ち目隠しになる。 |
| ジューンベリー | 落葉広葉樹 | (※近縁種含む)春の花、初夏の実(食べられる)、秋の紅葉と三拍子揃った人気樹種。鳥も大好き。 |
虫が苦手な人のための対策と選び方

いくら「生態系」と言われても、毛虫や蜂は怖いものです。虫のリスクを最小限に抑えるためのポイントを押さえておきましょう。
- 毒のある毛虫がつく木を避ける:ツバキやサザンカ(チャドクガがつく)、サクラ類(モンクロシャチホコがつく)は避け、アオダモやハイノキなど虫がつきにくい木を選ぶ。
- 柑橘系を避ける:レモンやミカンはアゲハチョウの幼虫が大好きなため、蝶を呼びたくない場合は植えない。
- 風通しを良くする:枝が混み合うと虫が発生しやすくなるため、定期的に剪定(透かし剪定)を行って風通しを確保する。
- いっそ鉢植えや低木にする:高木(シンボルツリー)を減らし、管理しやすい低木や下草を中心に構成するのも一つの手です。
よくある質問
- 引き渡し後に木が枯れてしまったら保証はありますか?
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積水ハウスのエクステリア事業(積水ハウスノイエや指定工事店)で施工した場合、通常「2年間の枯れ保証」がつきます。水やりをしていたのに枯れてしまった場合などは、無償で植え替えを行ってくれるケースが多いので、営業担当や現場監督に確認しましょう。
- 5本の樹計画を採用しない(木を植えない)ことは可能ですか?
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可能です。強制ではありません。ただ、分譲地(コモンステージなど)の協定で植栽の最低本数が決まっている場合や、緑化地域による法規制がある場合は、最低限の緑化が必要です。メンテナンスフリーを目指して「コンクリートで埋め尽くす」こともできますが、夏場の照り返しが厳しくなり、外観の魅力も半減するため、慎重な検討をおすすめします。
- 落ち葉掃除が大変そうです。
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落葉樹を植えると、秋から冬にかけて落ち葉掃除が必要です。手間を減らしたい場合は、「常緑樹(ソヨゴ、シマトネリコ、オリーブなど)」を中心に選ぶと良いでしょう。ただし、常緑樹も春先に古い葉を落とすため、全く掃除が不要になるわけではありません。
まとめ
積水ハウスの「5本の樹計画」は、単に庭に木を植えるだけでなく、家族が四季を感じ、小さな命と触れ合う「豊かな時間」をデザインする提案です。在来種を選ぶことで、日本の気候に無理なく馴染み、手入れの手間を減らしながら美しい景観を維持できます。
「庭は家の顔」とも言われます。まずは手入れが楽なアオダモ1本からでも、5本の樹計画の哲学を取り入れてみてはいかがでしょうか。窓から揺れる緑が見える暮らしは、想像以上に心地よいものです。
